転任の御挨拶

 このたび、2022年10月1日付で、宮城教育大学から東京大学へ転任致しました。

 2013年4月に宮教大・旧教育復興支援センターに着任して以来、各地で復興や震災伝承に取り組む方々と過ごした9年半は、私にとってかけがえのない日々でした。皆様のご厚情に心より御礼申し上げます。
 被災の爪痕が色濃かった着任当初と比べると、沿岸部には新しい街並みがひろがり、震災を伝承する施設が次々とオープンし、311の記憶や教訓を語りはじめる人々が増えるなど変化がみてとれました。教育現場の支援にはじまった私の仕事はやがて、学校や地域における震災伝承や防災のあり方を問う教育研究へと展開していきました。
 「あの震災の記憶を風化させてはならない」と奔走する人たちに後押しされて、第3回国連防災世界会議、各地で相次いだ災害被災地への支援、宮教大における新・防災教育研修機構の発足や教育研修プログラムの運営、研修開発などに取り組みました。多忙ながらも、健康で有意義と思える毎日を過ごすことができましたのもひとえに、多くの方々の支えのおかげです。
 新任地の東京大学人文地理学教室におきましても、これまでのご縁を大切に、東北での経験を糧にして、専門の地理学をベースに震災に向き合いつづけ、被災地の復興や、社会の防災力向上、そして地理学研究の発展に貢献できるよう努力して参ります。

 今後ともご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

小田 隆史