東京大学駒場博物館では、国土地理院と共催し、2025年度秋季特別展「世界をビジュアル化する―未完の地図製作史―」が11月30日(日)まで開催されています。本展では、今年100周年を迎えた日本地理学会の初代会長であり、東京大学初代地理学教授でもある山崎直方をはじめ、地図に関わった多様な人物の足跡をたどりながら、地図が描き出してきた世界像と、その背後にある思想や技術の歴史を紹介しています。
本学の各キャンパスに所蔵されてきた貴重な地図史料に加え、航空写真や衛星測量など、今日の地理空間科学へとつながる最先端技術も取り上げることで、文理融合の学問としての地理学の広がりと、東京大学において人文・自然地理学を学べる機会を知ることもできる展示となっています。
人文地理学教室が所蔵する「外邦図」の原図や関連資料も展示されています。外邦図とは、明治期から第二次世界大戦期にかけて、旧陸軍参謀本部が収集・作成した地図群を指します。終戦時には占領軍から焼却命令が出されましたが、その学術的価値を知る地理学者らの尽力により、その一部が密かに市ヶ谷の参謀本部から運び出され、国立大の地理学教室等に保管されてきました。
11月8日(土)には、本展に関連したギャラリートークが開催され、当研究室の小田隆史准教授が登壇します。
ギャラリートークでは、展示に合わせてこれら外邦図の具体的な史料を取り上げ、地図がもつ学術的価値と歴史的背景について解説するとともに、より近年の地図の活用にも着目しつつ、小田准教授が取り組むWeb-GIS(インターネット上の地理情報システム)等を用いた防災地理教育の可能性について紹介し、いのちを守るための地図活用のあり方について話題提供します。


